だれトク?;新型コロナウイルス感染症の5類引き下げ

政府が新型コロナウイルス感染症を感染症法上の分類を2類から5類に変更することを検討しているようです。コロナ政策がうまくいっていない理由を、本症が2類感染症に指定されているからだというひとがいますが、本当なのでしょうか?

もし、コロナが2類感染症から外れたらどうなるかを解説します。

①検査・治療が保険診療に、ワクチン自己負担になる;現在までコロナ感染症にかかる検査費用(抗原検査・PCR検査)は国庫負担で行われていました。しかし、5類感染症になれば検査は保険診療にかわり、それなりの負担が生じます。コロナと診断以降の治療も国庫負担だったのが保険診療に代わります。非常に高価な治療薬が経済的な利用で使用されないケースも今後出てくるでしょう。コロナワクチンは当然自己負担になります。現在まで、ワクチンは国が購入し、配給する制度でしたが、今後はインフルエンザワクチンと同様に任意で個人負担で接種する方針になるでしょう。ちなみに、開発にそれなりの費用が出た思う新規帯状疱疹ワクチンが4万円です。ファイザー・モデルナは足元をみてるでしょうからかなりふっかけるはずです。タダでもすすまないワクチンがよりいっそう進まなくなるのは明らかです。

②医療機関が感染対策をしなくなる;発熱外来はスタッフに通常診察時間終了後に居残って手伝ってもらっているわけですが、当然それには人件費が生じます。また、発熱外来受診時に我々スタッフが着ている防護服、フェイスマスクなどにも費用はかかります。これらの人件費や対策費は発熱外来受診時に頂く2類感染症加算や院内トリアージ加算をあてています。5類格下げならば、それにまつわる加算はなくなるわけで、対策にかかる費用はすべて医療機関の持ち出しになります。そうなれば、現在のような感染症対策はなくなり、コロナ発生前と同様に発熱患者さんも通常外来で待機することになり医療機関での感染も激増するでしょう。

③重症化時の調整役がいなくなる;現在、陽性者は保健所の管理のもと経過観察が行われます。重症化が予想されるかたはあらかじめ入院となり、重症化をきたしたひとも保健所を通じて入院が斡旋されています。5類に引き下げ後はこのシステムは終了します。今であれば、保健所は公権を使って病院に入院を要請できますが、引き下げ後は我々開業医がそれを担うのでしょうがまったく公権をもたない我々は、病院側に入院を断れればおしまいです。診断したはいいが、重症者の引き取り先がない状況が続けば、最終的には我々開業医が発熱患者の診察をボイコットするでしょう。

で、結局5類に引き下げて、誰が得をするのでしょうか?う~ん、思い当たらない・・・。あっ、そうか! いたいた! コロナ行政がうまくいっていないと言われて支持率をおとす人たちだ。5類にしたから数字はあがってこないので自分たちは批判されないし、それは医療の現場の問題でしょと言って終わるシステムにしたいわけですね。

5類への格下げは、国・行政の責任放棄・責任転嫁そのものです。