乳がん検診;伝わる検診票と伝わらない検診票

最近、コロナのお話しばかりだったので、たまには乳がん診療のお話し。

乳がん検診で要精査になると異常所見が記載された結果票が送られてきます。その報告様式は施設によって様々で、非常に丁寧に記載されたものからそうでないものまでがあります。精査を担当する側として欲しい情報は、最低でも所見の部位とその性状で、そこに検者が良性よりか悪性よりに考えるかの意見(カテゴリーで可)があると尚ありがたいです。もっとも伝わりやすい報告様式は所見の部位や性状についてスケッチをつけてくれるもので、指摘した技師さんや読影医の気持ちになって『うんうん、この所見気になるね。分かる、分かる。』と頷きながら気持ちよく検査ができます。また、スケッチがなくても精中機構の正しい用語で書かれていれば十分伝わります。

しかし、検診施設の中には『右腫瘤』とか『左石灰化』という最低限の記載しかしてくれないところもあります。もちろん、我々は左右の乳腺すべてを詳細に観察するわけなのですが、そのような所見のみの場合はどこをどう評価していいかが分からず、精査担当する側には相当なストレスになります。

経験上、こういった施設の検診票をだす施設の検診票には共通の特徴があります。

①読影・判定医の指名の記載がない;精中機構の推奨である2重読影がなされていない可能性があるのかもしれません。診断に自信がない・責任を持ちたくないというのが最大の理由でしょうか?

②検査・精密結果の返信が不要である;検診精度向上に努力している施設は自分たちの診断能力を化学的に客観的に評価しています。検診結果をフィードバックして、感度・特異度・陽性的中率などを分析し、正中機構を推奨する数値から大きく離れる場合は読影基準を見直していきます。検診結果を集めないということは、緒からそういった分析を放棄していることを意味します。おそらくは、そもそもそういった分析が必要であるという事実すら知らずに検診事業を行っているのでしょう。

③結局全く異常がないことが多い;②で説明した要因で、精度管理が全くなされていないため通常ならば異常所見としないものを異常所見としてしまうことが多いです。念のため、取り寄せた画像をみて愕然としたことは少なくはありません。

①と②については、検診をうけられた方なら確認できるかと思います。もし、自分がうけた検診が①と②を満たしているなら、その施設での検診を見直してみてもいいかもしれません。

なお、今回のブログの内容は具体的にどこどこの施設を指したものではありません。でも、自分のところのことかなと思うことがあれば、いまいちど自施設の検診を見直してみましょう。