12-15歳へのコロナワクチン接種;悩ましい選択
報道のとおり、新型コロナウイルスワクチンの接種対象が従来の16歳以上から12歳以上に引き下げられ接種が開始されようとします。しかし、本当に接種すべきなのかの疑問があり、自分なりに現状をまとめてみました。
この年代へのワクチン接種の効果と安全性についてはNew England Journal of Medicineという権威のある医学雑誌で『Safety, Immunogenicity, and Efficacy of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Adolescents』という論文で報告されています。この試験では12-15歳の被検者をワクチン接種群(1131人)とプラセボ(偽薬)群(1129人)で分け、以後の感染率、抗体獲得率、副反応について調べています。結果としては①ワクチン接種を受けた群ではひとりも感染しなかった(有効率100%、プラセボ群は16例で発症)、②ワクチン接種で中和抗体が獲得できた、③ワクチン接種群に重篤な有害事象の発症はなかったというものでした。ただし、プラセボ群での発症症例16例のうち、重篤な事態に陥ったものはなかったとも記載されており、意地悪な見方をすれば、ワクチンで確かに罹患率には差が出たが生存率には何ら差が出ないから、この世代の投与は無意味ともとれます。その世代のかたが無症状でも周囲の家族などに移してしまうということも懸念されますがリアルワールドでは、その周囲は接種を終えているわけでそこから流行が拡がるとも考えにくい状況です。
一方、この世代のワクチンの問題として子宮頸がんワクチンによる副反応が挙げられます。接種をうけたなかの極少数に全身の疼痛、運動障害などが出現しそれが長期に持続するというものです。不思議なことに外国での報告がなく、日本人特有な副反応といわれております。この病態には諸説があり、実際はワクチン接種によるものではなく、この年代特有な心的なものが原因ともされています。センセーショナルに報道された結果、日本での子宮頸がんワクチンの接種は実質的に停止しており、結果として子宮頸がんの罹患率は下がらず現在に至っています。やがて子宮頸がんは日本人のみにみられる日本の風土病になってしまうのではと懸念されております。このような症状の発症の引き金になるのがワクチン接種による疼痛とされていますが、コロナワクチン接種後の疼痛、発熱や倦怠感は子宮頸がんワクチンのそれに比べると明らかに強いことを考えると、子宮頸がんワクチンでおきたのと同じような事が十分に起こりうるのでは考えます。
以上を踏まえての私見ですが、この世代への接種については日本人の大規模なデータが出そろってからでいいでしょう。焦らず、日本人でのリアルデータをみてメリット・デメリットを検証して、そこから開始でいいと考えます。